- ムスリム同胞団の組織構成は創設者ハサン・エルバンナー が一般メッセージに定めたビジョン、理念及び思想的基礎 を体現化し、「サラフィー宣教、タリーカ・スンニー(ス ンニ教団)、スーフィー真理、政治組織、社会思想、スポ ーツ団体、科学文化連合、経済企業」としての同胞団の包 括性を確証する。 機関、組織及び管理構造を含むこの構 成は、同胞団の目的とともに歩み、特にカリフ制再興及び 世界の教導に関してエジプト内外においてその実現への活 動がなされてきた。
- 機関、組織及び管理構造を含む組織構成は、同胞団の理念 や思想を実現するとともに、権力の座に就き、社会変化を 促す政治計画を実施するための主要な方法であるため、ム スリム同胞団の指導者にとって極めて重要な意味を持つ。
- 最高指導者及び所属組織は同胞団の組織構成において中軸 的かつ主要な地位を獲得し、各指導者の特色がこの構造及 びムスリム同胞団の総合計画を実施する際の役割に影響を 与えた。下部の管理構成(局、委員会、部)は、特に危機 的局面において同胞団の柔軟性及び応用性を強化するため、 組織管理に極めて重要な役割を担っている。
- 特別部門は、同胞団の重要な決断の特定に主軸的な役割を 果たしている一方、過激派ジハーディスト及びテロ組織や 団体の根源であるため、結成当初から現在に至るまで、ム スリム同胞団の組織構成の最重要な基礎である。
- 組織や管理構造は、ムスリム同胞団が組織的であることを 示しているが、 同胞団の業務遂行の仕方は個人的かつ私 的傾向があり、最高指導者や上級幹部が意思決定過程を支 配している。その例として、ムスリム同胞団の組織及びピ ラミッド構成においては、シューラ議会は高い地位にあり、 大きな権限を有するが、この権限は限定的なものであり、 最高指導者の管理下に置かれている。すなわち、シューラ 議会は、西洋に対する同胞団のイメージを向上し、近代民 主主義を支持するという印象を与えるための盾又は形式に 過ぎないものである。
- 組織及び管理構造の進化は、一定ではないムスリム同胞団 と歴代エジプト政府の間の関係を反映している。前世紀の 1954 年から70 年代前半まで任期が続いたジャマール・ア ブドゥル・ナーセル大統領及び任期が2014 年6 月から始 まり現在まで続くアブドゥル・ファッターハ・エルシーシ 現大統領の時代は類似性があり、この関係は衝突と争いに 特徴付けられる。この結果、同胞団の組織及び管理構造の 縮小化、及び動員力の大幅削減が行われた。その一方、同 胞団に対する扱いについて故ムハンマド・アンワル・サダ ト元大統領と故ホスニー・ムバラク元大統領の在任初期は、 類似性があり、同胞団との関係は寛容的、柔軟的かつ協力 的であった。この結果、同胞団が組織及び管理構造の大幅 な再結成に成功し、それにより、政治的及び社会的情勢に おいて有力な当事者になった。ムバラク政権の終盤におい てこの関係は衝突に変わり、やがて安全保障的及び法的プ ロセスを経て、同胞団は再び禁止され非合法組織として扱 われることになった。
- 同胞団の組織及び管理構造は継続性、一貫性、応用性など の強みがある一方、様々な欠陥もある。例えば、同胞団の 幹部と次世代の青年の間の抗争に関係するものや特別部門 の人員の支配に関係するものに加え、国民国家の曖昧さな どである。それに加え、この組織構造内での昇進過程は親 族や密接な関係にある者へのえこひいきに基づいている。 そのため、同胞団はエジプトで権力の座に就いた年(2012 年~2013 年)に国家的要務を担う能力を有する人材を確 保することに失敗した。
- 同胞団の組織構造の長短所の仮設検証により、ムスリム同 胞団の内部の社会的、政治的、組織的の変化により、多様 な長所があることが明かにされた。さらに、同胞団が結成 から2013 年6 月30 日の革命以降まで直面した危機や課題 管理における短所が明らかにされた。
- 2013 年6 月30 日の革命はムスリム同胞団の歴史の転換点 になった。この革命は、同胞団の組織及び管理構造に大き な揺さぶりをかけ、今は停滞、低迷、空白の悪循環に陥っ ている。それは同胞団の将来及び組織構造の再構築に関す る幹部間の亀裂及び論争として表れ、今後同胞団は、特に 国内外において孤立した状況下での組織の再編成の可能性 への兆候が見えない。
- ムスリム同胞団は政権を握った一年の間にトルコの公正発 展党の経験を活かし、国の要職を支配しようとした。また、 イランの革命防衛隊の経験から着想を受け、政府と併行す る治安機関を設けた。