特務機関 ムスリム同胞団 誕生..目的..発展

08 Mar 2021

Publication Thumb

ISBN: 978-9948-846-30-7

AED 30

Available in other languages:

ムスリム同胞団の特務機関は、いくつもの思想的構造の上に 成り立っており、あらゆるレベルで組織の目的を達するため に、力の果たす役割を重視するという、組織創設者ハサン・ バンナーの一連の姿勢を表している。 -ムスリム同胞団の特務機関の結成は(エジプト)国内の状況、 地域・国際的な情勢を反映したものである。しかしそれは、 この帰還が権力奪取計画を実行する手段であることを否定し ない。 - ハサン・バンナーとサイイド・クトゥブの思想は今も、現代 の暴力組織、アルカイダからイスラム国/ダーイシュに至る 様々な組織を正当化する根拠となっている。 - 特務機関はジハードの原則を採用しているが、それにもかか わらず、イスラム主義的ではない他の運動の思想や手法の源 泉にもなっている。 それは、当時の西欧政治のイデオロギ ーの一部を特徴づけていたファシズムやナチズムの軍事組織 に相当するものと理解できる。 - 権力への到達と“イスラムのカリフ制国家”樹立を追及する ことがムスリム同胞団の思想の柱である。それがイスラム教 のシャリーアに基づく神の統治の実践を実現する唯一の方法 であり、そのことは、力の行使とそのための準備なくしては 成功しないとの見立てである。 - 特務機関は、秘密の活動に参加する者同士の直接・間接の継 続的な関係を通じて網状に連なった一定の組織体のようなも ので、小人数からなる各細胞のメンバーは、自分の属する細 胞のメンバー以外は知らない。 -ムスリム同胞団は敢えて、その特務機関の存在を秘密にした。 民衆を惑わし、作戦の進行や指令を指導部が確実に統率する ためである。重要な情報を隠すことで、それについて説明や 正当化は不要となり、疑念、非難、不興を避けられる。 - 特務機関の活動は、時代の状況によって活発化したり、落ち 込んだりした。ある時期には圧力や困難に直面して、ムスリ ム同胞団と政府との間に一定の協力がみられ、そうした時期 には特務機関の役割は低下した。逆に、政府の関係が緊張し た時期には、特務機関の活動は活発化し、ムスリム同胞団は 地下活動に訴えた。1960 年代の治安機関による取り締まりの 結果、それは「65 年組織」という形で現れ、この集団はサイ イド・クトゥブの思想を実践した。 - 特務機関は、エジプト外では、パレスチナで軍事活動に参加 し、また、エジプトではイギリスを標的とした。そのことが、 ムスリム同胞団内の特務機関に“抵抗運動”という正当性や、 政治・治安面の影響力を与えた。 - 1940、50 年代において、ムスリム同胞団の特務機関は、政治 家や治安機関幹部を標的とした暴力活動への関与を通じて政 敵と対決する手段であった。 - “特務機関の忠誠”は、忠誠心を根付かせ、困難に立ち向か い、世界でイスラムの統治を実現するという組織の戦略的目 標を達成するための力を増した。 -エジプトの特務機関の経験は、他のアラブ諸国のいくつも のムスリム同胞団支部にインスピレーションを与え、シリア、 リビア、スーダン、イラク、パレスチナ、イエメンの各支部 が、自国や地域で権力を握り、イスラムの統治を課す目的か ら軍事部門を創設した。 - ムスリム同胞団と現代のジハード主義諸組織の間には、絡み 合い、関わり合いがある。ジハード主義諸組織はその思想を ムスリム同胞団のイデオローグであるサイイド・クトゥブか ら吸収した。このため両者間には戦略的な共通性がある。 - ムスリム同胞団のプラグマティックな政治的選択により、そ の本性を隠しつつ、状況や勢力バランスに応じて段階的な暴 力を行使する大きな余地を得た。 - エジプトの特務機関の目標は、イラン革命防衛隊の目標と非 常に類似している。両者とも、軍事力に加え、治安上、組織 的、社会的、経済的といった他のあらゆる手段、ソフトパワ ーを駆使して目的を達成しようとする。両者は、体制を転覆 し、政府を支配して、カリフ制/世界的なイスラム政府の樹 立に至るために、宗教的信念利用する。 - エジプトにおける2013 年6 月30 日革命の後、ムスリム同胞 団は、暴力を伴う激しい分裂に見舞われた。圧力に立ち向か って組織を守るためには暴力も用いるべきだとするクトゥブ 派の特務機関と、組織に対する圧力を収拾するためにこの段 階では平和的手段を採用すべきとする改革派の間で、である。